装着♪その髪留めはコンパクトディスク♪
〜ソウチャク ソノカミドメハ コンパクトディスク〜



「姉さん、このCDを今使ってもいいですか?」
あたし
は今貰ったCDをケースから取り出して見せた。
「使う?そりゃいいけど・・・ここにCDデッキないでしょ?」
それから考えた“とっておき”を実行するべく行動を開始する。





「見ててね♪」

ボロボロのリボンを瞬時にほどき、手早くCDの穴に髪を通す。
自分で言うのもなんだけど、それは一瞬のハヤワザ―
姉さんだって目を丸くしてたもの。


「す、すごいじゃない、イリ。」
姉さん
に褒められて、あたしは頬を染める。
「へへへ・・・」
褒められるのなんて、最初にあたしが稼働した時以来かな。


「でも、CDって髪を結ぶものじゃないのよ。知っておいてね。」
指を立てた姉さんにすぐにピシャリと言われた。
「・・・は、はい。」
一応知ってます・・・それくらいは。


「ご、ごめんなさい。姉さんの大切なCDを・・・すぐに・・・」
あたし
は泣きそうになって、すぐにCDを取ろうとしたけど・・・
でも、抜けない・・・
全然抜けないよ、これ!?


当たり前だよね。
だって、あたし の髪の毛のボリュームすごいから。
普通に考えてみても、あたしってバカすぎ−
姉さん
に嫌われちゃうよ!?


「いいわよ。」
でも、半泣きのあたしに声をかける姉さん、とても優しい表情。
「面白いわね。髪の毛をCDで結ぶ子なんて、貴女くらいかな?」
「・・・でも、でもっ!!」



「ま、イリが有効に使ってくれるなら、そのCDも喜ぶでしょ?」

「姉さん・・・う・・・うう・・・」

なんて優しい人なのだろう。
もう、あたし、泣くのを堪えられなくなっちゃって―


「ほら、簡単に泣かないの。」
そう言って指であたしの涙をすくってくれる。
「そんなじゃ、これから社会生活送れないぞ?」

「ううう・・・ぐすん。ハイ。」



姉さん
・・・
あたしはどうしたら・・・
どうしたら姉さんのこの御恩に報いれますか?
どうしたら姉さんを笑顔にさせてあげられますか?


姉さんに頭を撫でられながら、そんなことを考えていた。
それから―
姉さんはその後もある程度の生活費需品を揃えてくれた。
そして仕事に行くと言ってアパートから行っちゃったの・・・


でも・・・
あたしは泣かない。
もう、泣く事はない。
姉さんにも言われていたから。


これからひとりで生活しなきゃならないことを。
それが大変なことであることくらい、あたしでも想像できる。
・・・でも耐えられる。
だって、姉さんが頻繁に会いに来ると約束してくれたんだから!


それだけで十分。
姉さんのことを想えば、あたしはなんだってできる。
そう、どんなに辛いテストだって平気なんだからね!!
「ようし!やるぞ!!」あたしは気合いを入れた。


今日から始まるあたしの一人暮らし。
でも、まずは―そうよね、腹ごしらえをしなきゃ。
そう思って、残っていた乾燥シイタケの袋開けた。
調理の方法知らないから・・・とりあえず、そのままカジった。


口に広がるまろやかな歯ざわりに加えてその濃厚な(略)
姉さんとシイタケがあればあたしは生きていける。
そんな気がした。
―シイタケを口いっぱいに頬張りながら。


研究所から出たあたしは―今までとはまったく違う環境にいる。
そして、今はもうイリーガルじゃなくて、貰った名前がとある。
歌えないから、ボーカロイドとも呼べない身だけど・・・
でもそんなあたし無音イリの社会生活がいよいよ始まるの!!



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概要

もくじ

第1部 第2部 第3部
覚醒♪ 到着♪ 出撃♪
誕生♪ 完食♪ 迎撃♪
発生♪ 報告♪ 惨劇♪
命名♪ 装着♪ 感激♪
決定♪ 変装♪ 終劇♪
登場♪ 錯綜♪ 衝撃♪
到来♪ 接続♪ 反撃♪
限界♪ 宣告♪ 目撃♪
設定♪ 驚愕♪ 再誕♪
再会♪ 慟哭♪ 共鳴♪
提案♪
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